『四つの署名』コナン・ドイル著
『緋色の研究』や『バスカヴィル家の犬』などに並んで人気のあるホームズ作品ですね。
とある聡明で愛らしい婦人が訪れたことにより始まるインド王族の宝石をめぐる物語です。


依頼主のご婦人こそ、ワトソンの妻となる人ですね。
小学生の頃の私は「結婚するのがホームズじゃなくてよかった」と思ったものです。偶像崇拝みたいなものでしょうかね。


今でもミステリーを読んでいて、探偵には恋愛をしてほしくないという気持ちがあります。
いや、探偵だって恋の一つや二つしてもいいし、その作品の中だけのかりそめの恋ならアリかなとも思うんですが、純愛をシリーズ通してやられるとミステリーではなく恋愛モノを読んでいる気分になる。もっとも、元から夫婦というのは別ですが。


というのも、探偵は私にとってミステリー作品の『ゼロ地点』なんですね。


恋愛って始まりがあって終わりもあって、とにかく変化がありますよね。
感情の面でも価値観の面でも、生活すら変えてしまうかもしれないのが恋愛です。


けれど探偵はいついかなるときも不変の個性であってほしいと私は思っています。
冷静でいつもと変わらぬ暮らしをしている探偵。ホームズなら霧のロンドンのベーカー街で煙草とコカインとヴァイオリンの転がる部屋にいる。金田一耕助ならあのもじゃもじゃした髪と飄々とした風貌。ポワロだったら几帳面に撫でつけたヒゲかな。


そういう絶対的なイメージが不変だからこそ、そこを『ゼロ』という基準にして、毎度起こる事件や依頼人の変化が際立つというか。


一方でワトソンが恋愛をすることによって、彼は「こっち側」に近い人間なんだという親近感が沸くんですよね。読者とホームズとの架け橋であり、ホームズに最も近しい男だけど、読者のように恋も結婚もするという。
思えば金田一シリーズでは警部さんが恋をしたり、ポワロシリーズでは親友のヘイスティングスがワトソンのように事件で知り合った女性と結婚します。


探偵モノの中で変化があるのは事件だけで充分といいますか、探偵個人に恋愛のような大きな変化があると他の変化がかすんで見えてしまう気がするんですよね。




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201601252234
『シャーロック・ホームズの帰還』コナン・ドイル著
とある事件で滝壺に落ちたはずのホームズ。しかし、読者からの要望により『帰還』することになります。
『六つのナポレオン』『金縁の鼻眼鏡』などの10作の短編が連なる一冊です。


ジェレミー・ブレット主演によるドラマ版ホームズを、最近某動画サイトで観直しています。OP曲は息子も大好き。あのバイオリンの演奏は作曲した方のお嬢さんだったと記憶しています。
ホームズの物語は小学生のときに初めて手に取って以来、何度読んだかわからないほど。
ところが、ドラマを観ていて犯人やトリックがわかるのに、何故か動機がわからないことが多く、再読に至りました。


学生時代の私はホームズの特異性やトリックに心を奪われて、事件の背景や登場人物の心情にそれほど注意を払っていなかったようです。
ですが、今回読み直していくと、犯人や被害者の心情に胸が苦しくなったり顔が綻んだりするシーンが沢山あるんだなと今更ながら再認識。
特に『踊る人形』が記憶に残りました。これ、今で言うストーカー事件ですよね。やるせないなぁ。


特異な探偵の隣に女性の相棒がいるドラマや小説もありますが、男性二人組のほうが私は好きなんですね。その原点がここにある気がします。
女性には入り込めない男同士の友情って確かにあると思うんですよ。
ホームズの個性は探偵としては素晴らしいけれど、人間的にはちょっと……なものをワトソンの物語的な語り口がそれすら面白く見せているわけですしねぇ。


ところで、ホームズでも絶賛の声にちょっと気を良くしたり、ワトソンの協力や友情が必要だと思わせる描写がありますよね。そこがうまい。彼にも人間的な部分はちゃんとあるんだとちらつかせることで、ホームズの存在感が厚くなってますねぇ。


それに、事件がないときの『静』と、事件が起こったときに『動』のホームズの対比。これがまたいい。
事件を追うばかりではなく、日常を描いて対比することって大事だと思うんです。エヴァでも朝を迎える都市の日常の描写が僅かですがあるんです。なんだか、それを思い出しました。






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201601232235
『星の王子さま』サンテグジュペリ著
『スティル・ライフ』で芥川賞を受賞した池澤夏樹さんの翻訳です。


砂漠のまっただ中で不時着した飛行士が不思議な少年と出会います。
いくつもの小惑星を巡り地球にやってきた王子さま。そして彼とのやりとりが織りなす心のたゆたう様。


言葉ひとつひとつが染みるんですね。
大人になったとき、胸がいっぱいになって涙が出そうになるのはどうしてでしょう。
王子さまを想うから? それとも自分がいつしか大人になってしまったと気付くから? いやいや、また別の理由でしょうか。


人間の関節や姿勢が無意識に縮み込もうとするように、私たちの視点や発想も知らない間に固くなっていくものかもしれませんね。
どうして砂漠が美しいのか。あの有名な名言はそのままでも心に響きますが、その前後にある物語や背景を知るとなお人を揺さぶることでしょう。


冒頭の入り方も素敵ですよね。
最初から砂漠で王子さまと出会った場面ではなく、飛行士が6歳のときに描いた絵の話から始まります。
王子さまや子どもたちの見ている世界がどんなものか、すっかり忘れてしまった大人たちにもわかりやすく書かれています。


薔薇やヘビ、キツネが登場しますけれど、それぞれに誰かとのあれこれを思い出してしまうのです。




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201601152156
末広がり
暖冬かと思えばすっかり寒くて気温の差が激しいですね。
我が家にもこたつが登場しましたが、朝起きると猫たちも猫団子を作っていることが多くなりました。





とりあえず、この2匹はキャットハウスの使い方を間違えております。





さて、先週、母子手帳をもらってきました。
今年の色はピンク。オレンジのは息子のときのやつです。
この時点で満9週。出産予定日は8月8日。末広がりでございます。
無事に育ってほしいものです。





小町は夫がいない間にMacで暖をとっております。
変なとこ押しちゃだめだぞ。

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201601132134
『おいしい文藝 ぐつぐつ、お鍋』阿川佐和子他
『お鍋』にまつわるエッセイ37篇を集めたものです。
著者は阿川佐和子、池波正太郎、北大路魯山人、安野モヨコ、江國香織、川上弘美、東海林さだお、椎名誠、ねじめ庄一、本上まなみ、吉川英治などなどいろんなジャンルの著名人多数。


こういう多くの著者のエッセイが楽しめる本というのは、まだ知らない作風との出会いの場になりますね。
このエッセイでは神吉拓郎の作風が気に入り、他の作品も読みたくなりました。


冬だから鍋の文字に惹かれてとった……のではなく、実は『ぐつぐつ』という言葉の音に惹かれて手にとったのです。
本当のところ、私は鍋があまり好きではないのです。


それでも、それぞれの鍋へのこだわり、思い出が見えて面白かったです。
みんなそれぞれの形があるんですよね。鍋と一言で言ってもたくさんの鍋料理があるように。


食べることは生きることとよく言いますが、食にまつわる物語、特にエッセイにはそれが強く滲むと考えています。
言うなれば、この本は鍋を通して著者の人間性や人生、価値観、視点なんかを万華鏡のように見られるわけです。
まるで文才の『寄せ鍋』を楽しんでいるような一冊でした。




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201601062358
『確率捜査官 御子柴岳人 ゲームマスター』神永学
この作者は心霊探偵八雲シリーズでご存じの方もいらっしゃるのではないでしょうか。


取り調べの可視化と効率化を目指して新設された特殊取調対策班のメンバーである美形天才数学者(ただし性格に難あり)御子柴岳人と、どちらかというと感情的な新米女性刑事の友紀がコンビを組んで活躍……という概要になります。


シリーズ第二弾ということで、この本をいきなり手に取っただけではわからない背景もあるようですが、すらすらと読めました。
想像していたよりは数学っぽくないですね。


私は根っからの文系なので、理系の人の思考回路というか発想がまったく予想できないし、そこに心底惹かれます。
視点や考え方を偏らずにいることの面白みはあります。


御子柴とヒロインが対極というふうには感じられず、ヒロインに感情移入できなかったので、残念です。きっと、ヒロインにシンクロできたらすごく楽しい作品だと思います。


御子柴は対人関係に問題ありってことになってますけど、それにしては子どもっぽいかなぁ。負けず嫌いの設定からなのかな。
ミステリとしてフェアかアンフェアかと言われれば、アンフェアだと思います。


ヒロインの他に男性刑事も出てくるんですけれど、彼が御子柴とコンビだったらどうだったのか読んでみたいですね。





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201601031902
| 猫草物語 |
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